「この子には、かなわない」

はじめまして。

私はこれまで、小児科医そして新生児科医として、多くのダウン症の方、またダウン症以外でも、様々な理由で生きていくためにいろいろなサポートが必要なお子さん、そのご家族にお会いして来ました。そこで、感じてきたことがあります。

「この親御さんたちには、かなわない。」

どういう意味だろうと、思われる方もおられるかもしれません。何年もの年月を、そのお子さんと過ごされてきた親御さんは、私達小児科医を越える「スーパーな」存在だと感じます。多くの小児科医が、同じような感覚を持っていると思います。若い小児科医は、このような親御さんたちに育てられて一人前になる、といっても過言ではないと思います。

医療者としてかなわない、とまず感じます。その子が病気の時、どの程度普段に比べてしんどいのかわかっておられます。私達の診察でわかることよりも、ずっと正確に「この子はいつもと違うから入院が必要だと思う」など助言して下さります。

また、1人の人間としてかなわない、とも感じます。深い愛情に溢れ、その子の気持ちを推し量り、共感し、時には叱り、泣き笑いしつつ、傍で支えておられます。その愛は、お子様だけでなく、他のどの方にも持たれているような印象を持ちます。ちょっとやそっとでは、動じません。表現が難しいですが、とても良いお顔(表情)をされています。

そして、その親御さんたちは、もう一段階上の想いを持って、こう言われるように思います。「この子には、かなわない」=この子がいたからこそ、これまでの人生で想像もしなかった、1つ1つの幸せや、人として大事なことに気づかされた。この子がいるからこそ、今の私達がいるのだ)と。この “UL316” の皆さんのメッセージからも、そんなお気持ちが伝わってくるように感じます。

もちろん、1人として同じ親御さんはおられません。大阪で診療していたのもあったからか、お子さんに「あんた何してんねん!」と怒る、半分ヤンキーのようなお母さん、、。でも、みなさん、なんだか、優しさが後味に残るんです。

はじめてダウン症のお子さんを授かったご夫婦を見ていると、「まだまだ、私達の手のひらの上にいるな」と正直感じることもあるのですが、いつしか時間がたつと、私達小児科医の方が、親御さんという特別な存在の手のひらの上で、うごめいているような感覚を覚えます。

そのような親御さんに共通することとして、こころに余裕を持つことが上手である、と言えるかもしれません。自分の生活や仕事で手一杯の場合は、なかなか、難しいのかもしれません。忙しくても、こころに余裕を持てる方もおられますが、そうでない方も多いと思います。そういった場合、特に生まれたてや、子育てが忙しい時は、十分周囲からサポートが得られるかどうかは、1つの鍵になると思います。この “UL316” は、きっと、そのためのヒントが得られるサイトなのではないでしょうか。心より、応援しております!

小児科医のK.B.
(奈良県)